24時間換気（常時運転）は義務
2003年に建築基準法が改正され、新築住宅には「24時間換気システム」の設置が義務化されました。背景には、シックハウス症候群(※)があります。新しい住宅は気密性が高く、室内に化学物質や湿気がこもりやすいため、健康被害を防ぐために、換気設備が必要とされているのです。
さらに、ただ設置するだけでなく「換気回数0.5回／h（1時間で部屋の空気の半分が入れ替わる）」という性能も求められています。つまり、24時間つけっぱなしにして初めて、その基準を満たすというわけです。
また、「カビや結露の防止湿気を外に逃がし、建物や健康への悪影響を防ぐ」といった住まいにとって重要な役割を果たします。
※：建材などから発生する化学物質や、カビ・ダニ・ハウスダストなどによる室内空気汚染が原因で、頭痛、吐き気、目の刺激、めまい、湿疹などの健康障害が起きる症状の総称。
24時間換気を消すとどうなる？
「つけっぱなしは電気代が心配だから、必要なときだけ動かせばいい」と考えて、換気システムを止めてしまう方もいるかもしれません。しかし、健康被害や住まいの劣化が起こる可能性があります。ここでは、24時間換気を止めた場合のリスクについて紹介します。
体調が悪くなる
24時間換気を止めると、空気中にホルムアルデヒドなどの有害物質がたまりやすくなります。特に築5年以内の住宅では、建材や家具から化学物質が放出されやすい時期。十分に換気されないと、頭痛や目の痛み、倦怠感など「シックハウス症候群」と呼ばれる体調不良を引き起こす恐れがあります。
カビ・ダニが発生する
換気が足りないと室内に湿気がこもり、カビやダニが発生しやすくなります。カビは壁や窓まわりなど目につく場所ならまだ対処できますが、家具の裏や収納の奥で気づかないうちに広がってしまうことも。
湿気を好むダニも同様に増えやすく、どちらもアレルギー性鼻炎やかゆみ、湿疹などの原因になることがあります。
結露・家の劣化
24時間換気を消すと、湿気が室内にたまり、結果として結露が発生してしまいます。窓や壁に水滴がつく状態が続くと、クロスがはがれたり木材が腐ったりと、住宅そのものの劣化につながる恐れがあります。
特に冬場は暖房と外気との温度差が大きく、結露が発生しやすいので注意してください。
24時間換気をつけっぱなしする際の電気代
24時間換気を常時運転しても、電気代は意外と安いんです。換気システムには「第一種換気」「第二種換気」「第三種換気」の3タイプがありますが、一般的な戸建て住宅で多く採用されているのは「第三種換気」です。この方式は、外の空気を自然に取り入れ、室内の空気を機械で排気するシンプルな仕組みで、省エネ性にも優れています。
第三種換気の電気代は1か月あたり約100〜200円程度で、冷蔵庫やエアコンに比べれば負担はごくわずか。それに比べて、換気を止めてしまうことによるリスクの方がはるかに大きいのです。結露やカビが発生すれば、クロスの張り替えや補修といった余計な出費につながりますし、カビやダニによる健康被害を考えると、電気代を節約したつもりが結果的に損をする可能性もあります。
24時間換気の電気代を節約するには掃除！
24時間換気の電気代は高くないとはいえ、できることなら少しでも節約したいですよね。おすすめは、2〜3ヶ月に1回のお手入れ。定期的にホコリや汚れを取り除くことで換気効率がアップし、無駄な電力消費も抑えられます。
ここでは、パーツごとに掃除の方法をご紹介します。
吸気口・排気口・カバーの掃除方法
掃除を始める前に、換気システムの電源を必ず切りましょう。安全のため、マスクと手袋の着用もおすすめです。吸気口や排気口のカバーは回す・引っ張るなどの方法で外せることが多いです。※取り外せない場合は表面や周囲だけでもOKです。
カバーやまわりに溜まったホコリを雑巾や掃除機で取り除きましょう。
フィルターの掃除方法
フィルターを水洗いできるタイプと、掃除機でホコリを吸い取るだけのタイプがあります。事前に取扱説明書で確認しましょう。
水洗いできる場合は、まず掃除機で表面のホコリを吸い、その後ぬるま湯や中性洗剤を使ってやさしく洗います。強くこすったり絞ったりすると破損の原因になるため注意しましょう。洗い終えたら、水気をしっかり取り、陰干しで完全に乾かします。乾いていないまま戻すとカビや臭いの原因になるため、注意してください。
また、フィルター掃除以外でできることとして、換気口の前を家具やカーテンでふさがないことも重要です。空気の流れが滞れば、せっかくのシステムも十分に機能しません。さらに、冬や夏に室内温度の変化が気になる場合は、熱交換型の換気システムを導入することで、室温を保ちながら新鮮な空気を取り入れることができます。
他の換気扇も、つけっぱなしのほうがいい？
他の換気扇も電気代は安いので、常時運転することをおすすめします。例えばお風呂の換気乾燥機では、天井埋込型・壁取付型ともに1か月あたり400〜600円。キッチンのレンジフードも「弱」運転なら月に約180円、「強」でも約640円程度。常時換気モード（消費電力5W）なら、24時間使ってもおおよそ月115円です。トイレの換気扇も1か月約40〜50円と低コスト。
24時間換気システムと併用することで空気の流れがよりスムーズになり、湿気や臭いもこもりにくくなります。
まとめ
24時間換気システムは「常時運転」が正解です。電気代は思った以上に小さなものであり、止めてしまうことで発生する健康リスクや修繕費用の方が大きな負担となります。
無理に節電をしようとせず、フィルター掃除や室内レイアウトの工夫で効率を高めながら、換気は常に維持することが大切です。健康と快適さを守りつつ、電気代を上手にコントロールしていきましょう。
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