
子ども置き去り事故への対策
夏場の車内は、エンジンを止めてからわずか10分で約45℃、30分後には55℃~60℃にまで達するため、短時間でも深刻な健康被害を引き起こすおそれがあります。実際に、子どもが車に置き去りにされて命を落とす事故が繰り返されており、送迎バスへの安全装置の導入が進められています。
国土交通省がガイドライン公表
2022年9月、静岡県で通園バスに取り残された3歳の女の子が、車内で熱中症になり命を落とすという痛ましい事故が起きました。
全国に大きな衝撃を与え、同年12月に国土交通省は「送迎用バスの置き去り防止安全装置ガイドライン」を発表。バスに取り付ける安全装置について、最低限満たすべき要件を明確にしました。
送迎バスの安全装置が義務化
2023年4月1日からは、送迎バスに、子どもの置き去りを防ぐ安全装置の設置が義務づけられました。対象となるのは幼稚園・認定こども園・保育所・特別支援学校などで、全国でおよそ24,000の施設、バス台数にして約44,000台にもなります。
なお、小・中学校や放課後児童クラブのバスについては安全装置の設置は義務ではなく、降車時の点呼などによる確認のみが義務となっています。
自家用車の対策も忘れずに
送迎バスに安全装置がついたからといって、安心してはいけません。子どもの置き去り事故は自家用車でもたびたび起きています。2023年8月には、北九州市の商業施設の駐車場で0歳の男の子が車内に取り残され、そのまま亡くなってしまいました。両親はそれぞれ「相手が連れていると思っていた」と証言しており、ちょっとした思い違いが、取り返しのつかない結果を招くことがあるのです。
では、家庭ではどんな対策ができるのでしょうか?「貴重品を子どもの隣に置いて、車を離れるときに気づくようにする」「降りるときは声をかけ合う」といった習慣は、すぐにでも始められる対策です。
もっと確実にしたいなら、自家用車にも置き去り防止の安全装置を導入するのがおすすめです。

置き去り防止装置の種類
現在、置き去り防止装置として認められている仕組みは2種類です。それぞれの特徴を説明します。
降車時確認式
「降車時確認式」は、運転手が車を降りる前に、後部座席まで移動して車内を確認するよう促すタイプです。たとえば、バスのいちばん後ろに「確認ボタン」が設置されており、それを押さない限り警報音が鳴り続けるようになっています。
さらに、一定時間内に操作がされなかった場合には車外スピーカーからも警報が鳴り、周囲に「車内に誰か残っているかもしれない」と知らせます。特に保育園や幼稚園の送迎バスなど、乗車人数が多い場面ではとても有効です。
自動検知式
「自動検知式」は、車内に取り付けたセンサーが、人の動きや振動・温度の変化を感知するタイプです。子どもが残っている可能性があると判断したときに、アラームを鳴らしたりスマートフォンに通知を送ってくれるので、うっかり見落としを防ぐのにぴったりです。
「降車時確認式」よりも安価で、保護者が気づきやすい機能なので、自家用車にはこちらを選ぶとよいでしょう。
【自家用車用】置き去り防止装置の費用目安
「安全装置を設置したいけど、高額なんじゃないの...?」と思う方も多いかもしれません。ここでは、自家用車向け置き去り防止装置の費用目安を紹介します。
本体費用
置き去り防止装置の本体価格は、機能によって異なりますが、目安としては5万円前後です。今のところAmazonや楽天市場では自家用車向け製品があまり出回っていないため、「子ども家庭庁」の安全装置リストから探すとスムーズです。
「装置の方式」欄に「自動検知式」や「併用式」と書かれていれば、自家用車に取り付けられる可能性が高いので、詳細ページをチェックしてみましょう。たとえば、加藤電機の「BEE737-C」は軽自動車からミニバンまで幅広い車種に対応しています。
設置費用
業者に取り付けをお願いする場合は、本体とは別に3〜4万円ほどかかります。電源の接続やセンサーの設置位置など少し複雑な作業があるため、プロに任せたほうが安心です。
ダッシュボードやシートに置くだけで使えるタイプなら設置費用は不要です。ただし、機能がシンプルだったり内蔵電池で動くものだったりするので、購入前に仕様をしっかり確認しておきましょう。

まとめ
送迎バスには安全装置の設置が義務化され、今後は子どもの置き去り事故も減っていくと考えられます。でも、自家用車でも同じような事故が起きていることを忘れてはいけません。「貴重品を子どもの隣に置く」「降りるときに声をかけ合う」など、日ごろのちょっとした習慣が大切です。
さらに安心を求めるなら、置き去り防止装置もおすすめです。多少の費用はかかりますが、我が子の命を守るためと思えば、決して高くはないはず。この記事を参考に、ぜひ検討してみてください。
一覧へ戻る