ニッチってなに?
「ニッチ」とは壁の中の空間(柱と柱の間)を活用してつくる、壁面に埋め込まれた棚のことをいいます。木造住宅の多くは、間柱(まばしら)と呼ばれる細い柱を等間隔に立て、その上に石膏ボードを貼って仕上げています。この間柱と間柱の間には一定の空間があり、そのスペースを利用して設けるのがニッチです。
ニッチは、ちょっとした小物やグリーンを飾るディスプレイ棚としてだけでなく、リモコンやスイッチをまとめたり、洗面室や玄関で収納スペースとして使ったりと、デザイン性と実用性を兼ね備えた便利なスペースです。限られた空間を有効活用でき、インテリアのアクセントにもなります。
ただし、ニッチはすべての壁に設けられるわけではありません。断熱材が入っている外壁側の壁や、コンクリートに石膏ボードを直接張っている壁、柱や配管のある部分などには、ニッチをつくるための空間がない場合があります。そのため、設置を希望する際は、構造や位置を確認しながら計画することが大切です。
ニッチのサイズはさまざま
「ニッチ」という言葉から小さな収納をイメージする方も多いかもしれませんが、実際には用途や場所に合わせてサイズを自由に計画することができます。一般的な在来工法では壁の厚さが約13cmほどあり、石膏ボードなどの厚みを差し引くと、ニッチの奥行きはおよそ10cm未満になります。収納スペースとして活用したい場合などは、設計の初期段階から計画を立てることで、壁を厚くして奥行きのあるニッチをつくることも可能です。
さらに、横幅や高さも自由にアレンジできます。横幅は柱と柱の間隔まで広く取ることができるため、工法によっては幅90cmほどのニッチを設けることも可能です。高さについても、足元から天井までをニッチとして活用するなど、設計次第で多彩なデザインが楽しめます。
ニッチの施工例
①玄関ニッチ
玄関横の壁にスリッパ専用の収納を設けました。来客用と家族用を分けてスマートにしまえるため、玄関まわりがいつでも整った印象に。出し入れしやすく、見た目も端正で、機能性とデザイン性の両方をそなえた収納スペースです。
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季節ごとの小物やお気に入りの雑貨を飾るのにぴったりのスペースです。帰宅したときにパッと目に入る小さなディスプレイコーナーとして、家族や来客をやさしく迎えつつ、空間のアクセントにもなる、心地よい存在感をプラスしてくれます。
②洗面室ニッチ
タオルや化粧品、スキンケア用品をすっきり収められる、洗面台横のニッチ。洗面まわりが散らかりにくく、見た目も清潔感のある空間に整います。お気に入りのボトルやディフューザーを並べれば、朝と夜のルーティンにそっと癒しが加わり、ちょっとやさしい時間に変わります。
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③キッチンニッチ
調理中にさっと手に取りたい食器や調味料をすっきり収められるニッチ。キッチンの壁面に埋め込むことで作業スペースを圧迫せず、動きに無駄のない調理ができます。食器やスパイスは、引き出しにしまうよりも目に触れる場所に並べておく方が取り出しやすく、料理の動きもスムーズになります。必要なものにすぐ手が届くことで、キッチン全体の効率も心地よく上がります。
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キッチンの腰壁に作ったニッチは、家族の目にも入りやすく、収納にもディスプレイにも便利なスペースです。ティッシュなどちょっとしたものをサッと取り出せる実用性はもちろん、季節の雑貨やお気に入りの小物を置けば、空間に温かみや個性がプラスできます。毎日目にする場所だから、自分らしくアレンジして楽しめるのも魅力です。
④リビングニッチ
リビングテレビボード横に、大きなニッチを造作。奥行きと幅をゆったり確保しているので、少し大きめのインテリアやオブジェもきれいに収まります。日常の"飾りたい気分"をそのまま受け止めてくれる、使い勝手のいいニッチです。照明を仕込むと、ぐっと雰囲気が引き立ちます。夜は間接照明としても働いてくれるので、リビングの一角にやさしい明るさが生まれます。
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リモコンニッチは、エアコンや照明、床暖房、インターホン、給湯器までひとまとめにできる便利なスペースです。壁から出っ張るリモコンが気になったり、サイズ違いでごちゃついて見える悩みも、ニッチに収めるだけで解決。枠の中に並ぶことでまとまりが生まれ、配線も隠れて見た目がすっきり。操作しやすい位置に設置すれば、使い勝手もぐっと良くなります。
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⑤トイレニッチ
トイレはコンパクトな空間ですが、掃除道具やトイレットペーパー、消臭グッズなど意外と物が集まる場所です。そこでニッチを設けると、芳香剤や予備のトイレットペーパーをすっきり収められ、空間を広く使えます。収納としてだけでなく、小さな観葉植物をそっと置けば、清潔感がふわりと漂う心地よいトイレになります。
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⑥ディスプレイニッチ
階段や玄関ホール、廊下など、ちょっとしたスペースに作るだけで、なんとなく寂しくなりがちな場所もぐっと華やかに。壁から出っ張らないので、空間はすっきり。そのままでもお気に入りのアイテムをさりげなく飾れるのがうれしいポイントです。
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お気に入りのタイルに合わせてニッチを作ると、ちょっと特別感が出ます。壁紙の色とそろえれば、目立ちすぎずに空間になじむアクセントに。そこにお気に入りの小物をちょこんと置くだけで、「あ、ここ私のスペースだな」って思える、小さな特等席の完成です。
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アーチ型のニッチにすると、なんだかかわいらしくてナチュラルな雰囲気に。少し広めに作れば、壁自体をディスプレイ代わりに使えるのも嬉しいポイントです。小物を三角形っぽく並べると、全体がまとまって見えるのでセンス良く見せられますよ。
まとめ
メリット
〇収納として使用できる
ちょっとした小物や日用品をすっきり収められるのが、ニッチの魅力です。洗面所や玄関などスペースにゆとりがない場所でも、壁の厚みを活かして収納を生み出せます。無理なく空間に溶け込み、使い勝手も見た目も心地よいアクセントになります。
〇飾りを楽しむことができる
ニッチは、お気に入りの雑貨やアートを飾る場所としても活躍します。気分や季節に合わせてアイテムを入れ替えるだけで、お部屋の雰囲気を手軽に更新できます。小さな舞台装置のように、日常へささやかな変化を添えてくれます。
〇空間のアクセントになる
壁面に立体感が生まれることで、空間全体にほどよいアクセントが加わります。クロスや照明にひと工夫したり、小物やアートを飾ったりすることで、ニッチそのものがインテリアの一部として息づくような仕上がりになります。
〇スペースを有効活用できる
「家具を置くと通路や部屋が狭くなる...」と悩みがちな場所でも、ニッチなら壁の中に収まるため動線を妨げません。限られた空間でも、ムダなく収納やディスプレイを叶えられるのが大きな魅力です。空間の軽やかさをそのままに、必要な機能だけそっと添えられます。
デメリット
△コストがかかる
ニッチは壁を一部くり抜くなどの施工が必要になるため、一般的な壁づくりに比べて手間とコストがかかります。とくに下地や構造への配慮が必要な場所では追加費用が発生する場合もあるため、事前にしっかり相談しておくことが安心につながります。
<対策>
・設計の初期段階でニッチの位置やサイズを決めておくと、あとからの追加工事を抑えられます。
空間づくりの早い段階で計画しておくことで、仕上がりもスムーズで無理のないものになります。
・シンプルなデザインや既製の棚板を使用することで、コストの削減が可能。
△設置場所が限られる
どこにでも作れるわけではなく、構造上の制約や壁の厚みによって設置場所は限られます。とくに柱や配管が通る部分は施工が難しいため、あらかじめ確認が必要です。間取り計画の早い段階から検討しておけば、希望の位置に取り入れやすくなります。
<対策>
・間取りの打ち合わせ段階で設計士に相談し、設置可能な壁を事前に確認しておく。
・構造に影響の少ない「キッチンカウンター下」や「廊下の壁面」などを選ぶのも1つの方法。
△移動できない
一度設置すると、棚の高さや位置の変更、取り外しが簡単ではないのがニッチの特徴です。暮らし方の変化に柔軟に対応しにくいため、どんな用途で使うのかを事前にしっかり確認しておくことが大切です。
<対策>
・将来的な使い方を想定した上で、汎用性のあるデザインにすると柔軟性を高めることができる。
・何を置くかを具体的にイメージして設計する。
△ほこりが溜まりやすい
奥行きがあるため、物を置いていなくてもほこりがたまりやすい傾向があります。とくに飾り棚として使う場合は、定期的にさっと掃除をしてあげると、清潔で心地よい空間を保てます。
<対策>
・掃除しやすい材質を選ぶ(ステンレス、タイル、塗装面など)。
・照明やガラス扉を取り付けてホコリの侵入を防ぐ工夫をする。
ニッチの目安サイズ
ニッチ収納をつくるときに意外と大切なのが「場所」と「サイズ」です。どこにでも作れるように見えますが、壁の中には柱や配管が潜んでいて、希望の位置に入れられないケースもあります。
サイズも同じで、入れたい物に対して小さすぎると使いづらく、大きすぎると今度は空間のバランスがゆらぎます。コンパクトな場所ほど、この"ちょうどいい"が効いてくるんです。
たとえば、よく使われるニッチのサイズはこんな感じです。
飾り棚タイプ
奥行きは10㎝くらい、幅は30cmほど、高さは30〜45cmくらいが一般的。小物やグリーンを置いても圧迫感が出にくい、扱いやすいサイズ感です。
収納棚タイプ
奥行きは10〜20cmくらいが目安。幅は、しまいたい物の数やサイズに合わせて調整すると、無駄のない"ちょうどよさ"に落ち着きます。
玄関ニッチタイプ
奥行き10〜15cm、幅80cm、高さ50cmくらいが多め。お客さまを迎える場所なので、飾る物が映えるバランスを意識したサイズです。
設置するときは、実際の動線や視界、そして何を収納したいのかをイメージしながら決めていくことが大切です。こうして日常の使い方と重ね合わせておくと、暮らしになじむ"ちょうどいい"ニッチ収納がつくれます。
サイズも使い方もさまざまなニッチ。
紹介した使い方のコツも参考に、ニッチでお部屋をすっきり、自分らしく使ってみてください。
またこれから設計を考えている方はぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
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