| こんにちは! 本多建設の本多和彦です。 |
| 四国の旅は続きます。昭和46年(1971年)3月7日(日)、 |
| 室戸岬から海沿いを徳島の方へ向かい、宍喰という町の |
| 国民宿舎水床荘を午前9時に出てさらにバスに乗り、徳島市に |
| 着いたのは12時7分。市内見物よりも鳴門海峡の渦潮が見たく |
| て、鳴門に向かい、渦潮が見える展望台へ登ったところ、干満 |
| の時刻でなければ渦潮が見られないようで、あいにく行った時 |
| にはそのどちらでもなく,展望台に私一人しかおらず、ひたすら |
| 海を眺めていました。風強く、寒く、対面に淡路島、左手に |
| 播磨灘、右を向けば太平洋、その交差点が鳴門海峡となります。 |
| 誰もいない展望台から眺める広漠とした海峡に、何ら遮る物の |
| ない風の勢いの強さで、山国育ちの自分は恐怖を感じ |
| 閉所恐怖症の逆があるなら、広所恐怖症とでもいえそうな、 |
| 10分としてたたずんでいられませんでした。 |
| 鳴門からさらに北へバスに乗り、讃岐津田へ17時10分に到着。 |
| バス停から歩いて15分もすると国民宿舎松琴閣にたどり着き、 |
| 運良く部屋があり、今夜は大広間ではなく客室に泊まれることに |
| 安堵しました。松琴閣とは、今東光が命名したようです。名前 |
| の通り入り江に向かって立ち並ぶ松林の間を縫う風の音は |
| まさに琴の音となって鳴り響くようです。宿泊代一泊二食で |
| 多分1200円だったはずです。 |
| 3月8日(月)、8時半、松琴閣を後にして、屋島に向かいました。 |
| 朝方の曇り空は屋島に着く頃には灰色の雲が風に押し流され |
| 少しずつ青空が多くなってきました。 |
| 屋島とは瀬戸内海に向かったなだらかな小山で、ロープウエイ |
| または登山バスでその山へ登ります。海へ向かった突端を |
| 北領と呼び、松林の小道が一周出来るように続いており、 |
| 人気のない実に寂しいところです。観光場所としては登山口 |
| を登り詰めたところを南領といい、多くの名所があります。 |
| 有名な源平の合戦、壇ノ浦はここから東南にみおろした、 |
| 向こう側五剣山との間にはさまれた入り江がそうであります。 |
| 血の池や屋島寺もこの南領にあります。 |
| 平家物語の全てを読んでいませんから、なんとなく平家最後の |
| 戦いの場所なんだなあとあまり感傷もなく見てまわりました。 |
| 高松に戻り、いよいよ四国を離れ、小豆島へ向かいます。 |
| 着いてみての印象は島とは思えぬほど大きな町だなあと感じ |
| ました。土庄町にある国民宿舎「島の宿」はやはり満員で、 |
| 大広間に相部屋となりました。 |
| 時間とお金の都合上、島一周は無理なので、土庄町から |
| 銚子渓を経て、美しの原、そして寒霞渓へ行ってみました。 |
| 寒霞渓の山上には小雪が舞い、寒くて震えていました。小豆島 |
| に渡ってからはどこへ行っても寒く、温暖な土地柄を予想して |
| たものが裏切られた気持ちでした。 |
| 翌日3月9日(火)坂出発14時40分関西汽船、大阪行きに乗り、 |
| 神戸港着17時半、神戸の国民宿舎「摩耶ロッジ」に泊まる。 |
| 摩耶山頂から眺める神戸、大阪、さらには紀州と続く大阪湾の |
| 夜景の美しさに息をのみ、旅の最後の夜ふさわしい思い出と |
| なりました。 |
| 摩耶ロッジを紹介してくれたのは、小豆島で相部屋となった |
| 神戸の人で、この春大学を卒業する記念に四国を旅していた |
| といい、全く私と同じ境遇に話が合い、是非摩耶ロッジに泊まれ |
| と勧めてくれたのが動機でした。まさに最高の場所でした。 |
| 宿泊費は一泊二食で1600円くらいかもしれません。 |
| 翌10日(水)、電車で帰るのも面白くないので、国鉄バスに |
| 乗っても同じチケットを利用出来るので、神戸発11時名神 |
| ハイウエイのバスに乗り、名古屋着15時近く、15時発 |
| 東名ハイウエイバスで一路東京へ、東京駅着20時40分、 |
| そして私の旅は終わりました。 |
| 旅の途中、日を経るごとにもっとお金があれば、もっと時間があ |
| れば旅を続けたい気持ちが強くなって、この旅が終われば、社会 |
| 人として過ごすことに不安を感じ、もっと旅を続けるにはどうしたら |
| いいだろうと、頭の隅にこびりつき、卒業して就職した会社を |
| わずか一週間で辞めることになろうとは、この時から私の中で |
| 何かが始まったのかもしれません。 |
| 2015.06.17 |
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