心惹かれる場所
「一度は訪れてみたい」と願っていた場所へ実際に足を運ぶのは、楽しいものです。モエレ沼公園は、私にとってまさにそのような場所の一つでした。

世界的に著名な彫刻家イサム・ノグチの軌跡を追う中で、「モエレ沼」という名を何度か目にしました。アイヌ語が語源であるこの言葉に、どこか心惹かれるものを感じていたのです。その由来はアイヌ語の「モレイペツ」(ゆったりと流れる、の意)だそうです。
写真だけでは、その全貌を掴むことができずにいましたが、昨年の北海道旅行において、ついにこの目で実物を確かめる機会を得ました。

モエレ沼公園ができるまで
1988年、札幌市が整備を進めていたモエレ沼をイサム・ノグチが訪れました。
そこは、それまで不燃ゴミの埋立地であった場所です。この地を見たノグチは、「人間が傷つけた土地をアートで再生する。それが僕の仕事です。」と語り、強く創作意欲を刺激されたといいます。ですが、ノグチは同年12月、基本構想をまとめた段階で急逝されました。彼の亡き後、その遺志を継いだ多くの人々が建設を引き継ぎ、17年の歳月を経て2005年にグランドオープンを迎えました。

実物を肌で感じる
私は公園の入り口でレンタサイクルを利用し、その広大な敷地を巡ることにしました。
人工的に造られた山や森が広がり、その合間にノグチの巨大な彫刻作品が配置されています。「地球を彫刻する」という壮大なコンセプトの通り、この公園全体がイサム・ノグチの作品であると感じさせられます。

かつて不燃ゴミの埋立地であった場所が、アートの力で見事に再生され、今や多くの人々を魅了する空間となっています。現地に立って初めて、その圧倒的なスケール感と、イサム・ノグチが構想した世界観を肌で理解することができました。
もしこの公園が自宅の近所にあったなら、子どもたちがまだ幼かった頃、たびたび一緒にピクニックを楽しんだだろうな、と想像しました。

-ORINAS MAGAZINE2025年11月号より-
一覧へ戻る