学生時代の恩師が埼玉の老人ホームに入られて４年経ちました。４年前のクラス会の折、入居されてとっても快適だから、のちのちの参考に見学にいらっしゃいと言われていました。

　それがなかなか機会のないまま、半年に１度の電話で済ませていた私です。

　このところ先生から頻繁にお電話をいただきます。私の孫娘のことを心配してくださってです。

　我が家にも泊まられたことがあり、同じ年頃の母とは話もあって母のことも気づかってくださるのです。

　４月に９２歳になられて、今を逃すとお元気なうちにお会いできると言う保証はありません。友人を誘って伺ってきました。

　ちーちゃんが「いいなーいいなあー、東京で」とうらやましがりますが、「なんか駅前でタクシーが拾えないみたいよ」と私。

　歩く覚悟で日傘の用意もしました。

　３階のお部屋が一番景観がいいのだとか。前は柳瀬川が流れ桜並木です。そして川向うは田んぼです。夕日が田んぼも川面も染めるのよと。

　駅周辺はマンションがいっぱいのベツトタウンの町です。

　お部屋へお伺いしたら明け方４時まで探し物をしていたとかで、お部屋片付けの最中でした。

　自宅のマンションはそのままにして要るものだけを持ってきているのでしょう。年してからでは、自分で18㎡に入るものだけに断捨離はできないでしょうね。

　趣味の世界の物が部屋中にあふれています。食事も掃除も洗濯も自分の手から離れてしまうと、行き着くところはそうなるのかもしれません。

　たしか４年前の今頃はシリアに行っていたはずです。本人曰く世界８０ヶ国に行ったとおっしゃつています。晩年は中近東からアフリカがお好きでした。

　この頃の世界情勢ではとてもいけませんから、いい時にいかれましたね。

　ご専門は微生物・・・・カビの世界です。最近偶然洗剤にカビを発見したとか。「この研究は誰も発表していないから」とひそかに洗面所で観察を続けていたのだそうです。ある程度までいったらメーカーに連絡してどの物資にカビが発生したのか調べてもらうと。

　ところがホームは研究室ではありませんと、ある日捨てられてしまったのだそうです。

　それがとても悲しくて自分のマンションに帰りたいと思ったとか・・・・・。身につまされました、科学者気質が抜けないんですね。

　でもエレベーターが無い５階のマンションでは暮らしていけませんし・・・・。

　７５人の入居者がいられるようですが、自分の足ですっすと歩けるのは自分だけと。

　入居したばかりの頃はいろんな教室もあって楽しいと話されていましたが、年齢を重ねるのは自分も周囲も同じなのですね。

　私たちの時代になれば、家族と共に最後までというパターンはいっそう少なくなるのが目に見えています。

　考えさせられることが多かった老人ホーム見学でした。

　帰りには先生の作品をいっぱい持たせてくださいました。物を増やしたくない私は少々尻込みしちゃったけれど。

　先生お元気でいてくださいね。またお伺いしますから。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　依田美恵子

軽井沢・佐久で建てる外断熱・省エネ住宅　中島木材の家
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