「床をめくったらシロアリがいた」――
弊社でも、最近このようなご相談が続いています。シロアリは"見えない場所"で静かに進行するため、被害に気づいたときにはかなり深刻な状態になっていることも珍しくありません。
今回は、国の調査データを交えながら、シロアリ被害の実態と防蟻処理の重要性、そして薬剤がどのように変わってきたのかを解説します。
「5軒に1軒」が被害を受けている現実
国土交通省の補助事業として実施された全国5,000戸超の木造住宅を対象とした大規模調査(2013年)では、床下にシロアリ被害が確認された住宅は全体の約19% という結果が報告されています。つまり、木造住宅のおよそ5軒に1軒でシロアリ被害が見つかっているのです。
さらに築年数との関係を見ると、被害率は年数とともに明確に上昇します。
| 築年数 | シロアリ被害の発生率(目安) |
|---|---|
| 築10年未満 | 約5% |
| 築15年以上 | 約10%超 |
| 築20〜29年 | 約20〜33% |
| 築40〜44年 | 約50% |
築20年を超えるとおよそ3軒に1軒、築40年を超えると2軒に1軒の割合で被害が発生しています。リフォームのタイミングで床下を開けたときに被害が見つかるのは、まさにこの「蓄積されたリスク」が表に出る瞬間です。シロアリは木材の内部を食い進むため、表面上は問題なく見えても、内部がスカスカになっているケースも珍しくありません。被害が構造材にまで及ぶと、建物の耐震性にも影響します。
茨城県は被害リスクが高い地域
茨城県は全国でも戸建て住宅の敷地面積が広く、水源が豊富なため床下環境が湿気を帯びやすい傾向にあります。同調査では、茨城県の木造住宅のシロアリ被害率は21.1% と報告されており、全国平均を上回っています。
茨城県で被害を引き起こす主な種類はヤマトシロアリです。日本のシロアリ被害の9割以上がこの種によるもので、4月〜5月に羽アリとして発生します。また、近年は温暖化の影響もあり、より被害規模が大きいイエシロアリの生息北限が茨城県結城市付近まで北上していることも確認されています。
取手市周辺にお住まいの方にとって、シロアリ対策は決して他人事ではありません。春先に家の周りで羽アリを見かけたら、それはシロアリが近くに巣を構えているサインかもしれません。
防蟻薬剤の変遷 ― 「強力だが危険」から「安全性重視」へ
防蟻処理に使われる薬剤は、時代とともに大きく変わってきました。その歴史は、効果と安全性のバランスを模索してきた歴史でもあります。
第1世代:有機塩素系(〜1980年代)
かつて主流だったクロルデンは、30年以上効果が持続する強力な薬剤でした。しかし、地下水の汚染や人体への有害性が問題となり、1986年に日本で使用禁止となりました。当時はこの薬剤が土壌に残留し続けること自体が「長く効く=良い薬」とされていた時代です。
第2世代:有機リン系(1980年代〜2003年)
クロルデンに代わって登場したクロルピリホスは効果が5年以上持続しましたが、シックハウス症候群の原因物質として中毒事故が多発。2003年の建築基準法改正で居室への使用が禁止されました。
第3世代:現在の主流薬剤(2003年〜現在)
現在は主に以下の薬剤が使用されています。
- 合成ピレスロイド系 ... 即効性が高く、一般家庭での使用実績が豊富。効果持続は約5年。
- ネオニコチノイド系 ... 哺乳類への毒性が低く、安全性が比較的高い。効果持続は約5年。
いずれも日本しろあり対策協会の認定薬剤であり、5年ごとの再施工が推奨されています。かつてのクロルデンのように数十年もつ薬剤はなくなりましたが、そのぶん人体や環境への安全性は格段に向上しました。「効果が短い=悪い」のではなく、「安全だからこそ定期メンテナンスが必要」と捉えることが大切です。
新しい選択肢:ホウ酸処理
近年注目されているのがホウ酸による防蟻処理です。鉱物由来の無機物で、乾燥した環境では分解されないため半永久的に効果が持続するのが最大の特長です。揮発しないため室内環境への影響がほとんどなく、小さなお子様やペットがいるご家庭でも安心です。海外ではニュージーランドやアメリカなどで100年以上前から使用されてきた実績があります。
ただし、ホウ酸は水に溶けやすいため、雨がかかる場所には使えません。また、すでに発生している被害への即効的な駆除力は限定的です。日本しろあり対策協会の認定薬剤には含まれていないため、施工業者の技術力と知識が問われる工法でもあります。
「防蟻保証切れ」が最大のリスク
新築時に防蟻処理を行っていても、保証期間は通常5年です。保証切れ後に再処理をせずに放置した場合、経過年数に応じて被害リスクは急激に上昇します。前述の調査では、保証切れから20年経過した住宅の被害率は45% にも達しています。
「新築時にやったから大丈夫」ではなく、定期的な点検と再施工が大切です。保証期間の5年はあっという間に過ぎてしまいますが、意外と再処理をされていないお宅が多いのが実情です。特にリフォームで床下を開ける機会は、防蟻処理を見直す絶好のタイミングです。
リフォーム時こそ防蟻処理の好機
リフォームで床や壁を解体する工事は、普段は見ることのできない床下や壁内の状態を直接確認できる貴重な機会です。この段階でシロアリの被害や蟻道(シロアリが作る土のトンネル)が見つかるケースは少なくありません。
防蟻処理は床下が露出した状態で施工するのが最も効果的です。リフォーム工事と同時に行えば、床を二度開ける手間やコストもかからず合理的です。特に築15年以上で一度も防蟻処理を再施工していない住宅は、リフォームのタイミングでの点検・処理を強くおすすめします。
また、断熱リフォームを行う場合は注意が必要です。基礎断熱工法では断熱材がシロアリの侵入経路になるリスクがあるため、防蟻処理との両立を設計段階から考慮する必要があります。
まとめ
シロアリ被害は「見えない」からこそ怖い問題です。
データが示すように、築年数が経過した住宅では決して低くない確率で被害が発生しており、茨城県は全国平均を上回るリスク地域でもあります。
防蟻薬剤も時代とともに進化し、より安全で環境にやさしい選択肢が増えてきました。
大切なのは、薬剤の特性を正しく理解したうえで、お住まいの状況に合った防蟻計画を立てることです。
リフォームをご検討中の方は、ぜひ床下の状態もあわせて確認してみてください。「うちは大丈夫」と思っていても、データ上は築20年で3軒に1軒が被害を受けています。
目に見えない場所だからこそ、プロの目による定期的なチェックが安心につながります。
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