リフォームの基礎知識と費用の相場
耐震工事の費用相場|築年数・施工内容別の目安と補助金・減税措置
いつ発生するかわからない地震に備えて、住宅の耐震工事を検討する方が多くなっています。特に、古い住宅のなかには現在とは異なる耐震基準で建てられた建物も少なくありません。今後も安心して住み続けるために、耐震工事の必要性や、料金の目安について確認しておきましょう。
この記事では、耐震工事の費用について解説します。また、耐震工事が必要な家の特徴や、工事で利用できる補助金・減税措置もご紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
地震に対する工事の主な種類
地震対策の工事には「耐震工事」「制震工事」「免震工事」などの種類があります。まずはそれぞれの工事の特徴を確認してみましょう。
耐震工事
耐震工事(耐震補強工事)は、建物自体の強度を高める工事です。一般的な一戸建てやマンションなど住まいの耐震対策に採用されています。具体的には、強度の高い耐力壁(耐震壁)を取り入れたり、接合部を金具で補強したりする工事が行われます。
制震工事
制震工事は、建物内部の制震装置によって地震の揺れを抑える工事です。制震装置が振動を吸収することにより、建物の揺れが小さくなります。主に高層ビルやタワーマンションなど、上層階の揺れが大きくなりやすい建物に用いられています。
免震工事
免震工事は、基礎部分に免震装置を設置して、地震の揺れを建物に伝えないようにする工事です。建物と地盤とを切り離すことで、建物が揺れにくくなり、ダメージが軽減されます。主に高層ビルやタワーマンションなどの高さのある建物に採用されています。
耐震工事の費用相場
続いて、耐震工事の費用相場を築年数別・施工内容別にご紹介します。耐震工事の費用は、築年数・工事内容・床面積・劣化具合といった条件によって大きな差が出る場合があります。そのため、以下は目安として参考にしてみてください。
【築年数別】耐震工事の費用相場
一般的に、耐震工事の費用相場は、築年数が長いほど工事金額が高くなる傾向にあります。
建物の築年数 | 耐震工事の費用相場 |
築20年以下 | 約100万円前後 |
築20〜29年 | 約130万円~150万円 |
築30〜39年 | 約170万円~200万円 |
築40年以上 | 約190万円~250万円 |
築20年以下の建物は、2000年に改正された建築基準法に基づき、最新の耐震基準(2000年基準)で建築されています。現行の耐震基準を満たし、耐震等級1以上が確保されているので、比較的工事する箇所が少なくて済むケースが多いでしょう。
一方、2000年以前は1981年に耐震基準の改正が行われました。下記の旧耐震基準に該当する建物は、現行の耐震基準に対応するために工事する箇所が多くなる傾向にあります。
■1981年5月31日までに確認申請が行われた建物:旧耐震基準
■1981年6月1日以降に確認申請が行われた建物:新耐震基準
【施工内容別】耐震工事の費用相場
建物に部分的な耐震工事を行う場合、費用相場は以下が目安となります。
工事の施工内容 | 費用相場 |
耐震金物の設置 | 約40万円 |
筋交いによる補強 | 約5万~25万円 |
耐震パネルの取り付け | 約25万〜65万円 |
屋根の軽量化 | 約80万〜150万円 |
■耐震金物の設置:建物の土台・筋交い・柱などの接合部に耐震金物を取り付ける工事です。
■筋交いによる補強:建物の壁に筋交いを入れて補強する工事です。
■耐震パネルの取り付け:建物の壁に耐震パネルを取り付ける工事です。
■屋根の軽量化:建物の屋根材を重量の軽いものに葺き替える工事です。
物件ごとの状況により、必要な耐震工事の種類や、施工する箇所や範囲が異なります。また、耐震診断を受ける場合、上記の耐震リフォーム費用に加えて耐震診断費用がかかる点を押さえておきましょう。
耐震工事が必要な家の特徴
ご自宅に耐震工事が必要なのか、不安なときは以下の情報を確認して、専門業者による耐震診断を受ける際の判断の参考にしてみましょう。ここでは、耐震工事が必要な家の特徴をご紹介します。
築年数が古い家
先ほどもお伝えしたように、1981年の建築基準法の改正にともない、耐震基準が見直されています。1981年以前に建てられた家は、旧耐震基準が適用され、耐震性能が不足している可能性があります。また、築年数が古い木造住宅では老朽化が進み、強度が低下しているおそれがあるのも注意点です。
過去に大地震を経験している家
過去の大地震で建物が倒壊などの被害に遭わなかった場合でも、地震によるダメージが蓄積されている可能性があります。建物の外観には問題がないように見えても、基礎や構造に影響が生じているおそれがあるので、現地調査でプロによる現地調査を受けておくと安心です。
劣化部分の補修をしていない家
建物に劣化の症状が発生しているにもかかわらず、補修せずに放置している場合は注意が必要です。劣化によって建物の強度が低下し、将来的な地震による影響が懸念されます。劣化部分が見られたら、早めに業者に相談し、補修や耐震補強などを検討しましょう。
耐震工事の費用負担を軽減できる補助金・減税措置
耐震工事の内容によっては、公的な補助金制度や減税措置の対象となり、費用負担を軽減できます。着工前にそれぞれの条件をしっかりと確認した上で、制度を活用するようおすすめします。
耐震工事に利用できる補助金・助成金
自治体によっては、耐震工事などのリフォームで利用できる補助金・助成金の制度が用意されています。居住する自治体ごとに対象となる工事内容や上限金額などの条件が異なるため、事前にご確認ください。なお、一般社団法人住宅リフォーム推進協議会のサイトでは、都道府県・市区町村ごとの制度を検索できます。
例えば、東京都の各区市町村では、耐震診断や耐震改修にかかる費用の一部を助成する制度が用意されています。耐震工事のほか、省エネ化やバリアフリー化を目的とした工事も助成の対象となる可能性があるので、ぜひチェックしてみてください。複数の工事をまとめて実施すると、コストを抑えやすくなるのがメリットです。
耐震工事に利用できる減税措置
住宅に耐震改修工事を行った場合、国による「所得税の税額控除」や「固定資産税の減額措置」を利用できる可能性があります。いずれも住宅のリフォームによって現行の耐震基準に適合させる工事が対象です。制度を利用すると、所得税額が一定額控除されたり、家屋にかかる固定資産税が減額されたりして、税負担を軽減できます。
また、地方公共団体が独自に減税措置を行っているケースもあります。例えば東京都の場合、固定資産税・都市計画税の減免制度が用意されています。こちらは、耐震化を目的として住宅の建て替えや改修をする工事が対象です。条件を満たす場合、固定資産税・都市計画税が減免され、税負担を軽減できます。
地方公共団体における減税措置の有無や申請方法について、詳しくは各自治体が発信する情報をご確認ください。
耐震工事の費用や必要な工事内容はリフォーム会社に相談を!
ここまで、耐震工事の費用を築年数別・施工内容に解説しました。築年数が古い家は、現在とは異なる旧耐震基準で建てられている可能性があります。また、過去に大地震を経験している家や、劣化部分の補修をしていない家は、この先の地震によるリスクが懸念されます。耐震工事が必要だと感じたら、早めにリフォーム会社にご相談ください。工事費用は住まいの状況によって変わるため、専門業者による耐震診断を受けて、適切な耐震工事で強度を向上させましょう。